『アルジャーノンに花束を』(ダニエル・キイス著)の感想です。
アルジャーノンに花束を新版 (ハヤカワ文庫) [ ダニエル・キイス ] 価格:946円 |
<ストーリー>
幼児並みの知能しか持たない32歳のチャーリーは知能が向上する脳手術を受ける。同じ脳手術を受けたネズミのアルジャーノンはチャーリーの競争相手。やがてチャーリーの知能は向上し天才へと変貌していくが、その過程で今まで気づかなかった人の本心や、知能だけでは理解できない愛情などに気づいていく。
世界的に有名な作品で、日本では何度かドラマ化されました。
<感想>
一番心に残ったのは、チャーリーの知能が上がり、自分は周りに見下されていたことに気づき、そして自分も無意識に人を見下すようになっていたところです。
パン屋で働いていたチャーリーは、同僚から嫌がらせを受けていました。手術を受ける前はそれに気づかず、みんな自分が好きなんだと思っていました。
手術をうけ知能が上がってから、自分は同僚に馬鹿にされていたこと、見下されていたことに気づきショックを受けます。
気付かない方が幸せだったかもしれません。
それと同時に、チャーリー自身も変わっていきます。
以前通っていた知的障害者の学校に顔を出した時、そこで働くキニアン先生から、知的障害の生徒を見る目が人を見下す目になっていた、以前のあなたはそんなんじゃなかった、と言われます。
また、パン屋の同僚からもだんだん敬遠されていきます。
天才になったチャーリーですが、自分が同僚よりはるかに賢いことが理解できず、なぜ同僚が自分の話についてこれないのか不思議に思います。
そんな態度が同僚から反感を買い、ついにはパン屋をクビになります。
チャーリーは無意識に人を見下していたのです。
気付かない幸せと無意識に人を見下す心について、私にも似たような経験があるなと思いました。
数年前に霞が関で働いていたころ、とあるキャリアさんにすごく見下されていた気がしました。ことあるごとに「コイツ何でこんなことも理解できないの?」って顔をされ、辛くてよくトイレで泣いてました。
その人が異動になり、次に来たキャリアさんがすごく良い方で、いつも丁寧に分かりやすく説明してくれ、とても仕事がやりやすかったです。
見下してきたキャリアさんはほんと嫌な人だったなと心から思いました。
その後、私が別の部署に異動し、そこで非常勤職員さんと一緒に働くようになったのですが、この非常勤さんが全然仕事が出来ない人でした。
なんでこんなことも理解できないんだろう、と不思議に思っていました。
ある日非常勤さんが、仕事が分からなくて辛いと泣いてしまいました。
その時に、これって前の見下してきたキャリアさんと私と同じでは!?と思いました。
私は見下すつもりなんかなく、何でわからないんだろう??と不思議に思ってただけでしたが、非常勤さんからしたら私に見下されていたようで辛かったのです。
あのキャリアさんも私を見下していたのではなく、ただ単になぜ私が理解できないのか不思議なだけだったのかもしれません。
それからは、非常勤さんにも分かりやすく丁寧に説明することを心がけるようになりました。
が、本音としては泣かれるのが怖いから必要以上に気を遣って優しくしてただけです。内心、何でこんなに気を遣わなきゃいけなんだろう、面倒だな、と思ってました。
その時に、私に優しかったキャリアさんも内心こんな気持ちだったのではないかと思いました。
前任から私が泣いてたことは聞いてたかもしれないし、泣かれるのは困るから必要以上に優しく接してくれていただけではないか??内心は今の私のように面倒だなと思ってたのではないか??
そう気づいてから、自分が恥ずかしくなりました。何も知らずにキャリアさんのことを、この人は私を見下してくるから嫌いだ、この人は優しくしてくれるから仕事がやりやすい、とか勝手に思ってました。
変わっていくチャーリーを見て、気づかない幸せと無意識に人を見下す心について、過去に自分も似たような経験をしたことを思い出しました。
<おわり>
このように感想を書いてみて、私は考えすぎ、気にしすぎだなと思いました。
キャリアさんの本心は全く違うかもしれないし、本当に心から優しくしてくれていたのかもしれません。
ただ、無意識に人を見下すことは注意したいです。
私は見下される気持ちと見下す気持ちの両方を経験してるので、無意識に人を見下して嫌な気持ちにさせないよう、意識的に気をつけたいです。
年齢的にも人に教える機会が増えているので、この小説を読んで、無意識に人を見下す気持ちについて改めて考えることができたのは良かったです。